ＬＩＬＡＣ　ＡＶＥＮＵＥ’９１

　故森本信光全日本煎茶道連盟事務局長は、黄檗山万福寺に設置されたわが国の煎茶道の諸流派の加盟する組織・全日本煎茶道連盟の本部でお会いしたのが最初だった。もう、今から３５年以上前である。

　煎茶の茶花と高遊外師に関する論文のご指導をいただくためである。高遊外師は「売茶翁」の名前で知られる、わが国の煎茶道の祖といわれる人物、黄檗宗の僧侶としても高名である。その関係で、黄檗宗の本山・万福寺に煎茶道の本部が置かれたわけである。

当時、森本師は、丸メガネの風貌でどことなく、学生僧の雰囲気を漂わせておられた。中国の竹林の七賢人になぞられ、江戸時代の文人趣味を背景とした煎茶道の歴史の中、その茶席に飾られる茶花は、抹茶席の茶花とは明らかに違っていた。

当時の文人趣味、中国の袁宏道師の「瓶史」に機縁する煎茶の茶花は、成熟期を迎えた今の日本文化と共通する点も多い。その頃、森本師と、高遊外師の精神論について、茶花、文人趣味について語り合ったのが、つい昨日のように思い出される。そのあと、縁あって、全日本煎茶道大会のスタッフとして、黄檗山で、大会のお手伝いをするようになっていくのだが、その後の生花店立ち上げ、花を生けるときの心得は、あの暑い全国大会の緊張感とともに森本師に教授していただいた点が多い。

花をいけるとは何か？　３５年以上経った今日でも色あせることないテーマである。

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